各戸に配布される電電公社の電話帳に住所氏名や電話番号が掲載されていた昔に比べると、個人情報の保護が厳しく言われる時代になりました。個人情報を流出させた場合は当然として、ランサムウェア感染など自分に非がない外的要因で情報が流出した可能性がある場合でさえも公表が求められるようになっています。
この個人情報の保護について、昔(と言っても20数年前ですが)は、おおらかだったというか、ザルだったというか、そもそもそんな概念もなかった時代で、例えばアニメ雑誌等(真っ先に思い浮かんだのがファンロード)の巻末には同じ作品のファンとの文通相手を求めるコーナーがあり、そこには住所氏名が当たり前に載っていたことを思うと隔世の感があります。ところで文通という文化は今でも残っているのでしょうか?
今回取り上げるドメイン(インターネット上の住所で、この探偵局ならpopolocrois.com)でも同じような状況があり、事業者からドメインを取得する際、登録者の住所氏名、メールアドレスや電話番号を入力する必要があるのですが、当時、そこで入力した個人情報は、当該ドメインをWhois検索すれば誰でも閲覧できる状況でした。本来はドメインの所有権をめぐる紛議が生じるなどした際に登録者の連絡先が分かるようにするための仕組みですが、実際にスパム業者がこれを悪用してWhois情報から有効なメールアドレスを収集するといったことが行われていたそうです。
Whois検索という手段を自分が初めて知ったのは、探偵局を立ち上げてしばらく後に「プロバイダのものではなく独自のURLにしたい」と2000年11月に「popolo-crois.com」のドメインを取得した時でした。登録後に自分のWhois情報を確認した際、「ドメインから登録者の住所氏名が分かってしまうとは・・・こんな個人情報をネット上に晒しても大丈夫なんだろうか?」と感心しつつ心配した一方で、ドメインのWhois情報という知識を得た瞬間でもありました。当時はまだ20代の若かりし自分が、その時に何を思って何をしたのかは知る人ぞ知るブラックボックスで、探偵局の大きな節目の1つでもあります。なお、後の自分の仕事でこの知識が役立つことになったので、人生何が幸いするのか分かりません。
それならドメイン取得の際に架空の内容を入力すればいいのでは?と思うかもしれませんが、虚偽の住所氏名だと後ほど登録が抹消される可能性があるため、自分の個人情報を賭けて、なすがままありのままに出たとこ勝負にまかせるという状況に甘んじるしかなかったんです。言うなればSNSのプロフィール欄に自分の住所氏名を書くようなものですから、今から思えば恐ろしい時代でした。 もっとも、「探偵局におかしなことを書いたら自宅を襲撃されるんじゃないか」なんて心配は全くしていませんでしたが(笑
そんな状況がしばらく続き、いつ頃からか個人情報保護の機運の高まりを受けて「ネット上にWhois情報という個人情報を載せるのはいかがなものか」という風潮となり、そうした海外の流れを受けて2003年頃から日本でもWhois情報公開代行という、「ドメイン取得時に登録者の個人情報が公開されるのを防ぐため、登録事業者の情報を代わりに表示させるサービス」が提供されるようになりました。海外で先行してそれに追随するというのはいかにも日本らしいですがそれはされおき。
このサービスのおかげで自分の自宅住所がネットで調べられるという状況は解消され、今ではWhois代行は幅広く提供されているので、個人情報保護のいい時代になったと言えましょう。そうは言いつつ、2000年当時の環境であったからこそ20数年続いた貴重な縁を紡ぐことができたことを考えると、そんな「古き良き時代」に感謝しなければと思ったりもします。
ちなみに、このWhois情報の最新情勢について調べてみたところ、2025年8月にドメイン情報の公開ルールが世界的に大きく変わり、これまでWhois情報に表示されていた連絡先の情報は原則非公開になったようで、Whois代行というサービスに頼らなくてもよくなったという時代に改めて驚嘆しているインターネット老人会の一員なのでありました。