21 ポポロ苦労すワード

~コミケットスペシャルゲスト原稿制作記~

(完成図)

1 はじまりのきっかけ

 ある日、「泰平楽」管理人の井上磨さんからメールが届きました。「3月21日に開催されるコミケットスペシャルでポポロの新刊出すので、クロスワードパズルでゲスト参加しませんか?」と。イラストはどう逆立ちしたところで描くことはできないので、そうした本に何かを書いたことがなく、機会があれば一度はやってみたいなぁと思っていましたし、クロスワードパズルを作るというのも全く初めてのことで、ふつふつと駆り立てられるものがありました。そんなわけで2つ返事で「やりまーす!」と参加させていただくことになったのですが、実はこの時にはまだクロスワードの恐ろしさには全然気付くことなく、「単語をいくつもピックアップして枠の中にあてはめていけばいいんだよね」と軽い気持ちで考えていました。

2 文字バトル開始!

 難易度的には「簡単すぎず難しすぎず、でもって歯応えのあるもの」を目指すこととなり、今回の本の趣旨から問題を作る範囲はピエトロ世代までのものとなりました。まずは答えとなるキーワードをずらっと思いつくままを書き出した後、エクセルを使って枠に組み込むことにしたものの、最初のうちは枠をどれ位の大きさにすればいいのか検討がつかなかったので、キーワードを適当に並べやすいところから並べることにしました。そして単に作るだけでは物足りなかったので、横一直線に「ポポロクロイスモノガタリ」と固定文字を置くことにしたのですが、後々これが非常に大きな難関になろうとはこの時点では知る由もなく・・・。
しかし数分後、このやり方では1つの表としてまるでまとまらず、キーワードが散らばるだけになってしまうことに気付き断念する羽目になりました。用意したキーワードを配置しようとしても、そうそううまい具合にマスが重なるわけではありません。そこで作る表のサイズを完全に固定して、その枠の中に是が非でもキーワードをはめ込んでいくように方向転換したところ、あらかじめ用意しておいたキーワードをはめこんでいくことなどとてもできるわけはないと、途端にクロスワードパズル作成の巨大な壁にぶち当たることとなってしまったのです。当てはめたキーワードのマスを利用して別のキーワードを作り、また新しく出来たキーワードを起点に別のキーワードを当てはめる・・・そんなに都合よく全てのキーワードがはまり込んでくれるわけがないんですよね。

3 行く手を遮る黒いヤツ

 さらに頭を悩ませることになったのが「黒マス」の存在で、キーワードが切れるところに考えなしにポンポン黒マスを入れていくと、表が真っ黒になってしまいかねません。そこで「黒マス」の配置に何かルールが存在するのかと気になってネットで調べてみたところ、

①「黒マス」はタテ・ヨコ方向に連続して並ぶべきではない
②「黒マス」によって表が分断されるのは好ましくない

 であることが分かりました。②については気にする必要はなかったものの、①については気をつけていてもすぐに当てはまってしまうという実に恐ろしい制限として君臨したため、せっかく思いついたキーワードもこの制限のために泣く泣く断念せざるをえないことが度々起きてしまい、さらには最初から固定配置することにした「ポポロクロイスモノガタリ」の文字が、厳しい制限の中でキーワードを考えるに際しての、さらに大きな障壁となってしまったのです。

4 神経衰弱消耗戦!

 それでもどうにかこうにか新しいキーワードを考えつつ、少しずつ表を埋めていったのですが、当然後になればなるほど置くことのできるキーワードは制限されることとなり、もはや「ありとあらゆるポポロな記憶」と「これまでに培ってきた日本語語彙」とのバトル&総決算です。どうしてもポポロに関するキーワードにならない部分については、問題文でポポロの内容に関連付けることにしながら、歯抜けになったマスにうまく当てはまるキーワードを探し出すことにもなりました。いつの間にか画面とにらめっこしながら5時間以上の時間が過ぎていましたが、疲れるどころか次第次第に完成していく表に気分は盛り上がり、作業に徹底的に集中することによってキーワードの発見効率も自然と上昇し、まさに「苔の一念岩をも通す」を体現することになってくれました。
いよいよ残りあと3語、ここまでくると互いにマスを共有する3語を決めるために、他のキーワードを変更することなどもはや不可能な状況で、是が非でも歯抜けになったマスにあてはまるキーワードを発見しなくてはなりません。あちらを立てばこちらが立たず、こちらが立てばあちらが立たず、あとほんの少しで到達できるはずの近くて遠いゴール、もどかしさを抱きつつもここがまさしく正念場、脳内辞書をフルにフルに回転させ・・・ついに・・・ついに完成!思わず拳を突き上げて「エイドリアーン!」と叫びたくなる心を抑えつつ、ふぅーっと深々と安堵のため息をついたところでひと段落をつけることができたのでありました。
実は先のお誘いメールの返事の中で「勢いに乗って1000マス×1000マスのパズルにしてしまうかもしれませんよ?」と豪語したのですが・・・今からしてみれば明らかにクロスワードパズルの恐ろしさを知らなかった無知ゆえの過ちだったことを、自戒の念をこめつつこの場をお借りして海より深く反省させていただきます。

5 キーキーキー

 完成後の表が出来てしまえば、作業のほとんどが済んだといっても過言ではありません。残るはキーワードを連想させるためのタテのカギ、ヨコのカギを作るのみです。ただこのカギはキーワードを連想しやすぎてもダメ連想しにくくてもダメとさじ加減が難しいところでもあります。また、表が思いのほか大きくなり、キーワードの数が40個になったので、カギを載せるスペースの都合上極力その内容をシンプルなものにする必要もありました。それでも表を作る難儀に比べれば実に簡単なもの、30分もしないうちにカギを作り終え、ここに見事「特製クロスワードパズル」が完成したというわけです。 そしてクロスワードパズルと言えば、「特定のマスを並び替えて出来る言葉を見つけ出す」のが定番です。当初はあらかじめ完成する言葉を決めておこうと思ったものの、キーワードを当てはめるのに精一杯でとても決めておいた言葉が完成できるような表などできるわけがなく、完成した表のマスを拾って作ることができそうな言葉を考えることになりました。幸い都合よく狙い通りのマスを拾い出すことができ、これにてミッション・コンプリートです。

6 推敲、推敲また推敲

 イラストレーターでデータを作り終えたところで実際に印刷して自分で解いてみると・・・んー、自分で作った問題だけに自分で解いても果たして難易度がどの程度のものなのか把握することはできません。ここはやはり第3者のチェックが欠かせないので、完成したデータを磨さんに送って実際に確認してもらうことにしました。
その効果はてきめんで、見事に「このキーワードは思いつきにくいけど大丈夫かなぁ」と不安だった部分について指摘をもらうこととなり、他にもいくつかカギが不十分でキーワードが連想しにくい、本を買いにくる年齢層から考えるともう少し分かりやすいカギの方がよいのでは、等のアドバイスを受けることとなりました。無論既に表に組み込んだキーワードを変更することはできないので、うまくカギの内容や言い回しを変更して、キーワードを連想しやすいような方向にもっていくことでなんとか解決を図ることにより最終形に辿り着いたわけですが・・・果たしてその内容がいかなるものか、ぜひぜひ実物をご覧の上挑戦してみてくださいね。

7 終わりに

 軽い気持ちで引き受けたものの、クロスワードパズルの奥深さ・難しさを経験することとなったのですが、実に楽しい作業となりました。無事に完成した時の喜びもまたひとしおで、こういう機会がなければ決して取り組むようなことはなかったものだったと思います。 キーワードは「なんだ、こんなの誰にだって分かるんじゃないの?」という簡単なものから「誰が分かるんじゃー!」と叫びたくなるような超カルトマニア級のものまで幅広く考えたつもりです。今回のパズルにより、「よーし、じゃあもっとポポロのことを知ってみようじゃないの!」と思うきっかけとなることができれば幸いです。

8 蛇の足

 実は完成した後、横一直線に並んだ「ポポロクロイスモノガタリ」の固定文字を外してクロスワード完成後に見つける言葉にしようかとも思ったのですが、あまりにも途中で推測されやすいですし、この文字を取っ払うとクロスワードの難易度が間違いなく上昇するので、さすがに見送ることにしました。
パズルの初期タイトルは「『ポポロクロイス物語』 クロスワードパズル」というそのまんまのものだったのですが、よくよく考えてみると「クロイス」と「クロス」は同じ意味なので一緒にしてまえー!との思いつきで「ポポロクロイスワード」に変更することとなりました。「ポポロ」で区切るもよし、「ポポロクロイス」で区切るもよし、ダブルミーニング(別な表現をすると「ベタ」)なタイトルとしてご察しくださいませませ。 

9 補足

 今回作成したクロスワードパズルは、

サイト「泰平楽」管理人井上磨さん発行の「Popolo Box」に収録されています。ネット上でパズルを公開する予定はありませんので、パズルの内容はこの本にてご覧いただけますよう、よろしくお願いいたします「泰平楽」にて通信販売していますので、ぜひ!)。