11 ピエトロとナルシアの恋(その2)

王位継承の儀式を受けるためにピエトロはギルダの館に向かいますが、事情を聞いてピエトロの力になろうとしてギルダに「ピエトロのことになるとどうして一生懸命になるんだろうね」とたしなめられるナルシア、そのやりとりを聞いて顔を赤らめあわててお茶を飲むピエトロ、この2人を見る限り、お互いに想う心はあってもまだ伝わってはいないようです。そして王家の洞窟の前までついていくことが許されたナルシアは、ピエトロが洞窟に入っている間、雪の降る中をひたすらピエトロのことを案じながら待ち続け、そして洞窟の中でバスカルから謎の言葉を受け、浮かない顔をして出てきたピエトロを見て心配していました。本当にいじましい姿でした。

それから一気に3年の月日が流れるわけですが、この間にこの2人に何があったのか全くもって不明です。が、ナルシアをサーカスに誘う時にサニアからデートという言葉を聞かされて動揺しまくっていたピエトロの様子や、ナルシアの「ピエトロが誘ってくれたのは初めて」という言葉から、3年間は相変わらずの状態が続いていたことだろうと想像がつきます。そしてサーカスの帰りに、ナルシアはピエトロの頬にキスをします。ナルシアにとっては本当に勇気を振り絞っての行動だったことでしょうね。その後のピエトロのたるみっぷりは凄かったですからピエトロにとっても予想外の嬉しい出来事であったに違いありません。

しかし「魔女は人間と一緒になれない」、ギルダのこの一言にナルシアは悩み続けることになります。その心の隙をガープに見透かされ、妖精城へ案内するための道具にされてしまいます。ナルシアは「人間になることができる」とガープから聞かされた時「これでピエトロと一緒になることができる」と心の底から喜んだことでしょう。妖精城でピエトロ達に助けられたナルシアは再び湖のほとりでピエトロと2人きりになります。ピエトロの「もう僕に黙ってどこにもいかないでよ」、ナルシアの「ピエトロのそばにいられるだけでいい」の一言、もうここで2人の心は通じ合っていたことでしょう。だからこそピエトロはマイラを倒した後、ナルシアのいる世界を守るため、たった1人でレムリア大陸を封印しに行ったのだと思います。悲しいまでの決意です。自分の愛する人を守るためにその愛する人と永遠に別れを告げなくてはならない、並大抵の想いでは到底できない決意です。その心はナルシアも同じでした。そして2人は揃ってレムリア大陸の封印を行い、その結果は、ここで述べる必要はないでしょう。

ピエトロはナルシアを助けるための方法をみつけることができず、海水に触れないよう抱きかかえることしかできなかったとき、どれほど自分の無力さを思い知らされ、くやしく、悲しかったことでしょう。だからこそバスカルに「願いを1つだけかなえてやろう」と言われた時、真っ先にナルシアのことを考えたに違いない、と思うわけです。

かけあしの泉で触覚や羽根のこと等を告白したナルシアですが、これもきっと今までずっとナルシアが悩んできたものですね。でもピエトロは一切気にもとめず「大切なのは種族でも外見でもなく心だ」と全てを受け止めてくれました。この言葉で、ナルシアは今まで自分を呪縛しつづけてきたことすべてから解放されたことと思います。そして最後にピエトロはこう言います、「僕と・・・・」。さて、なんと言ったのでしょうね?

5年越しの想いがようやく1つになりました。お互いに命をかけて相手を守ろうとした、そんな2人の結びつきは2度と離れることはないでしょう。そしてピエトロとナルシアによって、ポポロクロイスが一層平和に、豊かになっていくことでしょう。2人の未来に幸多からんことを切に願います。