241 ポポローグの世界

2018年6月9日

「ナルシアの涙と妖精の笛」には、メル、ザッパ、ミーシャやレパルドといった、ポポローグで冒険を共にした懐かしい仲間が再び登場します。ポポローグはピエトロが12歳の時の出来事、そして今作は18歳ですから、夢幻魔王の事件から約6年後が舞台となっているわけですね。おそらく、多くの方がこのポポローグの傭兵の面々に驚いているのではないかと思います。「そりゃあメルがいきなりあんな頭身になってるんだから当たり前でしょう」・・・、確かにそうではありますが、今回のテーマはそっちの方向性ではなく、ピエトロに対する言動に対して、ですね。

「みんな夢幻世界で一緒に戦ったのに、何でピエトロと会った時に初対面の感じになっているんだろう?」

その答えは、夢幻世界という特異性の中に見出せるんじゃないかと考えています。以前の「161 ポポローグは夢か?」でも触れましたが、夢幻世界での出来事は、ピエトロのお土産部屋の中に各地のお土産が並んでいることからも、決して夢の中での出来事ではなく、夢幻世界、すなわち“夢幻魔王イドが夢の世界に作り出した空間”というポポロの世界に実在する場所での出来事です。ただ、夢幻世界は実在するものの、夢との区別ができないことから、ポポロの世界の人にとっては夢として認識されているというややこしい状況になっています。私たちは、ゲームの画面を通じて夢幻世界と夢を別物と認識することができますけどね。お土産のように形に残る物があれば別ですが、そうしたものがなかったとしたら、誰に聞いてもはっきり覚えている人がいなかったとしたら、メル達が夢幻世界での出来事を「やたらリアルで長い夢を見ていた」と思っていたとしても致し方ないことかもしれません。

さて、そんな状況を自分の身に置き換えてみましょう。実際に会ったことはないけれど、デジャヴだろうと夢だろうと見たことがあるように感じる人が目の前に現れたとして、その人に、「お久しぶりです。実は私はあなたと夢の中で会ったことがあるんですよ」なんてことを言うでしょうか?言いませんよね、普通は。男性が街角で出会った女性にこんなことを言おうものなら良くても下手なナンパの手口、悪ければ通報されても文句は言えない気がします。となると、ポポローグの面々にしても、「夢の中で一緒に冒険した記憶はあるんだけど、実際に会ったことはないよね?」と思い、あたかも初対面であるかのような言動にならざるを得なかったのでは?と考える次第です。

もう一つは、考えておきたいのはコレ。あのロビンが人間大嫌いになっているんですよね。しかもこの発言ですから一層謎が深まります。ポポローグでピエトロの後姿をイノシシと間違えて弓を撃ったあのオッチョコチョイの狩人はどこに行ってしまったのでしょう?ちなみに、ポポローグのコレクションカードには、“異世界の森の住人で狩りをして暮らしていた弓の名手”と紹介されています。

考えられるとしたら、ポポローグのあの夢幻世界は、同じ時代の様々な場所を取り込んだとは限らないということです。王位継承の儀式を受けるパウロ王子がいることからも、色んな時代の色んな世界が混ぜこぜになっていた可能性があります。今作のロビンは、人間を毛嫌いする一方で人間の世界への興味も示すようになっているため、もしかするとフォリアのように、あるいはミルトやクルトのように妖精の世界から外に飛び出す時が来るかもしれません。夢幻世界に取り込まれたのが、そうして世界を旅して回っている未来のロビンだったとすれば、ひとまずはロビンの変わりようについては矛盾なく収めることは可能になります。今作でロビンがピエトロに会ったとしても、夢幻世界の中で会うのはロビンにとっては未来のことになりますから、この時点では間違いなく初対面になりますしね。この考え方をすると、デイモスについても考えられることが出てきますが、それはまた別の項にて。

「それはただの辻褄合わせでしょ?」と言われればそれまでの話ですけど、矛盾や違いが現れる場所には、何らかの考えるべきポイントが潜んでいます。今まで一つの場しかなかったところに新たな場が生まれれば、高さが生じます。高さが生じれば流れが生まれます。その流れが、また別の流れと交わって今までになかった流れが出てくるのであれば、それを楽しまない理由はありません。そんな探求をするのも今作の楽しみの一つではないかと思います。

epicsのやまゲンさんこと山元哲治さんのツイートによれば、今後、ポポローグのボリスが登場する模様です。ポポローグのコレクションカードには、“アルゴスに乗っ取られてしまった天空上の王子。その時に受けたショックで記憶を失ってしまい、あちこちを放浪している。攻撃魔法、武器攻撃ともに長けている。得意武器:剣、専用必殺技:雷神剣”と書かれています。どのようにボリスが関わってくるのか分かりませんが、今回のロビンのように大きな違いが表れたとしても、イロイロと考察できる材料が増えますから楽しいことになりそうです。