197 海に沈んだ黄金の鍵(その1)

2005年6月5日

 「人間と妖精は一緒になれない」、ギルダから言い渡されたこの言葉にナルシアは悩み苦しみます。もちろんギルダもナルシアを大事に思ってのこと、悲しい思いをさせることは分かっていながらも、それを承知で身を切る思いで告げたのは想像に難くありません。16年間実の母と同様にナルシアを大切に育て、そしてナルシアがどれだけピエトロのことを想っているのか知っているギルダなのですから。
そんな心の隙を見透かされ、ガープに「妖精王なら人間にしてくれる」と言葉巧みにそそのかされたナルシアは、ガープとともに妖精城に向かうことになりました。そしてその道中、パーセラの町で魔法の井戸でナルシアの行く先を追っていたピエトロ達をも大いに驚かせる事件が起きます。そう、ナルシアはあれほどまでに大切にしていた黄金の鍵をまるで何かの思いを断ち切るかのように海に放り投げてしまうのです。
この時ナルシアは一体どんな気持ちで黄金の鍵を捨てたのでしょう?そもそも黄金の鍵を捨てなくてはならない理由とは一体なんだったのでしょう?これを考えるにあたっては、ナルシア自身がもう1人の自分とも言うべき「カイ」という女の子についていかなる思いを抱いていたかについて思いを巡らせる必要があります。ナルシアはカイをありのままの自分として受け入れていたのか、それとも黄金の鍵で変身しつつも何か心の奥底に感じるわだかまりがあったのか・・・。
「もう黄金の鍵で変身しなくてもいいのね」、ナルシアのこの一言は非常に意味深です。時にはカイに変身することを積極的に楽しんでいるかのように見えることもあるナルシアですが、「もう・・・しなくても・・・」との言葉から、カイに変身することについて100%納得できていなかった節をうかがい知ることができます。もしカイに変身することをなんとも思っていなかったら、決してこのような言葉は出てこないでしょう。となると、果たしてナルシアはカイに対してどのような思いを抱いていたのでしょう?それは黄金の鍵を捨てなくてはならないほどのものだったのでしょうか?あるいは、ガープがナルシアに黄金の鍵を捨てるように指示した可能性も考えられます。この場合には、ナルシアが黄金の鍵を持ったままでは何か不都合なことがあったのかと、その真意を量りかねますから、やはり考察を加える必要が出てきます。
あの場面について「鍵を捨てた理由はなぜ?」この疑問を投げかけただけで、このように考えるべき要素が次から次へと出てくることになります。こうした疑問に潜む数々の背景の広がり、これもまたポポロの奥深さの1つと言えますが、どうやらもう少し考えを煮詰めていかなくてはならなくなってきたので、続きは次項にて!