167 王たる使命

2004年6月11日

 ガミガミ魔王がかつてピエトロに嫉妬していたように、王子、という立場は周りから羨ましく思われることがしばしあります。お城の中で大事に育てられ、何1つ不自由なく優雅に暮らしている、そのようなイメージがあるからなのかもしれません。そしてゆくゆくは一国の王となってゆくわけですから、ガミガミ魔王が勘違いとはいえ嫉妬してフライヤーヨットのスクリューを盗んでしまうという行動に出てしまったのは、その表現方法の是非はひとまず横に置いておくこととして、無理からぬことでしょう。ではポポロクロイス王家に生まれてみたいか、と言われたら諸手を上げてぜひぜひ!と言えるものでしょうか?
ポポロクロイスの世界には色々な王様が存在します。ポポロクロイス王国はもとより、ロマーナ王国もあれば天空城もあります。呼び方こそ違いますが日の国にも殿様がいます。王様の役目は一国の長として世を治めて平和を保ち、国民が安心して幸せに暮らせる国を造ることです(とこう書くとあの国の王様とかあの国のお殿様とか該当しなさそうな人が頭をよぎらなくもないですが)。だからそれぞれの国に何か異変が生じた時には先陣を切ってそれに立ち向かわなくてはなりません。一般的な「王」であれば話はここまでなのですが、それぞれの種族の王となるとまた別の宿命とも言うべき使命が課せられることになります。世界全体を襲う危機に見舞われた時、自らの命を賭してでも世界を守らなくてはならない、という過酷なまでの使命が。
「どうしてお母さんがそんな目に遭わなくてはならないの?」あまりにも悲痛なセレーネに対するルナの問いでした。ピエトロがレムリア大陸を封印するためにナルシアとの永久の別れを覚悟したように、そしてセレーネのように、種族の王たる使命を果たさんがために、時に最愛の者と別れなくてはならない宿命を背負っています。そしてその王たる子にあってはその「時」を受け入れなければならない宿命を背負うことになります。愛よりも親子の絆よりも大切なことが果たしてあるでしょうか?最愛の者と時を共有し心を共有する、そんな当たり前でかけがえのないことが許されず、残す側と残される側とで深い悲しみを共有しなければならないというのはあまりにも辛い運命です。きっと種族の王はそんな悲しみを乗り越えて世界を守ってきたのだと思います。それ故に世界は光に照らされているのだと思います。おそらく3000年前にバルバランを封印するべく海に没したレムリア王の時代にもその子達はルナと同じ問いを発したことでしょう。「どうしてお父さんがそんな目に遭わなくてはならないの?」と。このような悲しい問いがこれまでにどれほど繰り返されてきたのかは分かりませんが、どうか二度と繰り返されることがないよう祈るばかりです。
さぁ、これでも王家の道を迷うことなく歩んでみたい!と言えるものかどうか、それは個々の心のみぞ知るわけですが、ガミガミ魔王ならどう答えを出すのでしょうね。