248 ピエトロの変遷

2019年1月6日

田森先生の原作漫画をアニメ・ゲーム化する過程で、様々なバージョンのピエトロが描かれてきました。その辺りの流れを一度きちんと整理しておこうと思い、時系列でまとめてみました。この件については前々から不思議に思っている部分があり、それは後半にて。

1.1989年(原作の劇場アニメ化企画)

(ポポロクロイス物語アートブックより抜粋)

田森先生の漫画を劇場アニメーション化するという企画のため、福島敦子さんが描かれたイメージボードです。田森先生と福島さんが初めてタッグを組んだ瞬間だったわけですね。

アートブックには、この企画のために描かれたイラストが数多く掲載されていますし、2018年12月に行われたポポロファンフェスタでは原画が展示されました。1989年という30年近く前の原画が残っているというのは本当に貴重なことだと思います。なお、イラストの枠外には「ポポロクロイス企画用」と書かれています。

原作のアニメ化に向けたイメージボードということで、ピエトロの髪形や雰囲気は、原作に非常に近いものとなっています。

2.1992年(ゲーム化企画)

そして1992年9月という日付からも、当初はスーパーファミコン用として制作が進んでいた時のデザインなのでしょう。格好こそは今のピエトロに通じるものがありますが、髪形はものの見事な丸坊主で、菱形のポポロクロイス王家の紋章がなかったら「お前は誰だ!」となるのは間違いないと思います(笑)。

聞いたところによると、この時点ではスーファミで出る予定だったことから、メモリ上の制限があり、凝った髪形は難しいためにこのような髪形になったのだとか。次でご紹介するパイロットフィルム版では今の髪形になっていることから、プラットフォームがスーファミからプレステへと変わったことでメモリの制限から解放された結果、なのでしょうか?

もしこのままスーファミでゲーム化されていたとしたらポポロの歴史は大きく変わっていたかもしれませんね。

3.1993年(パイロットフィルム)

(ザ・プレイステーション1996年9月20日号より)

プレステでゲーム化するにあたり、メディアミックスの先駆け的に作られたというパイロットフィルムのために描かれたピエトロの図。日付が1993年9月22日となっているので、上のピエトロから約1年後の頃となります。なのでこの時期には現在のピエトロの姿が出来上がっていたのでしょう。

余談になりますが、このパイロットフィルムはSCEの研究予算で制作されたものであるため(スタジオはトライアングルスタッフ)、本来はSCEに著作権があるところ、映像の一番最後に表示される著作権表記は「YOHSKE TAMORI」のみとなっています。これは、当時はSCEが立ち上がったばかりでしっかりした体制がなく、著作権の持っていきようがなかったためにとりあえず田森先生にしておけば間違いないだろうということで、「YOHSKE TAMORI」のみのクレジットになったそうです。

4.謎の設定画

(ザ・プレイステーション1996年8月23日号及び9月20日号より)

そして以前から不思議に思っていたのが、中村隆太郎さんが描かれた左のような一連の設定画。

当時のゲーム雑誌の記事には、赤い服のピエトロについて、「ポポロクロイス物語初期のイメージボード。原作の漫画からアニメーション用に起こされたため、原作に近いイメージになっている」、船着き場のイラストについては「かなり初期のころのアニメーション用のイメージボード。王子の髪形や服装がかなりいまのものに近づいているのが分かる」と書かれています。また、アートブックには、同じ中村さんが描かれた、短髪カールの髪形で緑色の服に赤いマントを羽織ったピエトロが魔王城の仕掛けに挑むというゲーム的な部分を表すようなイラストも載っています。

1992年のピエトロが坊主頭で頭であることを踏まえると、赤い服のピエトロは、スーファミでの企画を進めるにあたって本当に初期の頃に描かれたものと考えられます。上の流れでいくと、1.と2.の間といったところでしょうか。アートブックに収録されているポポロ1の福島さんのイメージボードの日付は1995年9月~1996年1月となっているので、この船着き場のイラストは、パイロットフィルムが作られてから福島さんがイメージボードを描くまでの間、つまりは1993年9月~1995年9月頃のものと考えることができますが、ゲーム雑誌の記事では「かなり初期のころのアニメーション用のイメージボード」という説明と若干食い違ってしまう気がしなくもないです。

このあたりの状況を調べてみると、

  • 1993年にパイロットフィルム、ゲームが出るのは1996年。この3年の間に劇場版アニメの別企画があり、中村隆太郎さんがイメージボードを作成。この時はゲームのデザインを引き継いで髪が長いピエトロになった。
  • 原作に近い方のピエトロは、おそらく、ゲーム制作よりも先のアニメ企画のために描き起こされたのではないか?

という話もあるので、この2枚の中村さんのイラストについては別の時期に描かれたもの、と捉えればいいのかもしれません。


以上、ゲーム化をめぐるポポロの流れをまとめてみました。気にしなくても全く構わない部分、というかここまで疑問を持つ必要もないんじゃ?と我ながらに思わなくもないですけど、やはりポポロ道を究めるためにはどうしても考えておきたいテーマなのでありました。