106 竜の化身

2002年11月2日

 竜族が自分達だけで暮らすのであれば、人間の姿に形を変える必要はないはずなんですけど、老竜神の回想を見ても分かるとおり、サニアは小さい頃から自らを人の姿に変えています。竜族が人間の姿に形を変える背景にはどんな理由があるのでしょうか?
かつては竜族と人間族との間には、種族を超えた深い交わりを持っていた時代がありました。姿を変えるのも竜の国に人間が歩けるような階段が残っているのも、その時代の名残なのでしょう。お互いに深く畏敬の念を抱いて接し、人間がカオスの監視という神から与えられた使命を忠実に守るために自らの知恵を使っていた時代。それがいつの頃からか自らの繁栄ばかりを考え、自分達にはない力を恐れるようになり、妖精族や竜族を追いやるようになってしまい、ついには世界に破滅の危機を招いてしまったわけですから、人間族は他の種族から絶縁されても仕方のない立場であるんですよね。
それでも竜族が人間の姿に形を変えている、というのはやはりまだ人間族に完全に見切りをつけたわけではなく、いつかまたかつての交わりを取り戻すことができれば、との願いがあってのことなんじゃないかと思います。竜族と人間族とをつなぎとめる絆の1つ、と言うべきものかもしれません。もちろんそれが容易ならざるものであることは、老竜神がサニアとパウロの結婚を拒絶したことからも十分すぎるくらいに分かるのですが・・・。そうした状況を打破するためには何らかの「きっかけ」が必要で、そのきっかけとなったのはやはり、竜と人間の血を引くピエトロの誕生でしょう。ピエトロとマイラとの戦いを通じてサニアと老竜神は親子の絆を取り戻すことができ、そしてピエトロがポポロクロイスの王となってからはパウロとサニアは竜の国で暮らしていると聞いています。レムリア王家の血を引く人間の一族と、竜族を統べる老竜神が一つ所で時間を共にしているというのは、長い長い歴史の中の大きな一歩となることでしょう。
竜族と人族の血を引くピエトロ王が、妖精族のナルシアとともにユリウスの神殿(王家の洞窟)があるポポロクロイス王国を守っています。そして3種族の血を引くピノン王子も生まれました。果たしてこれから時代がどのような方向に進んでいくのかが楽しみですね。