2003年12月29日
メールで非常に考え甲斐のある質問が届きました。「サニアはなぜポポロクロイスに竜の剣を持ってきたのでしょう?」と。「竜の剣は王族代々に伝わる剣ですから、老竜神に勘当され既に王族にはないサニアが持てるものではなく」、かといって「勘当された状況で、老竜神がサニアの身を案じて持たせたものとは考えられず」、また「竜族一人一人がもつ守り刀のような『文化』として伝わる剣だとするならば、人間としての幸せを願ったサニアがそれを持ってポポロクロイスに来るのはやはり不自然である」、とのご意見で、これはまさしくその通り、ものの見事にサニアと竜の剣について考えうるべき道が全て封印されてしまったわけで、頭を悩ませることになりました。しかし考えてみるには非常に面白いテーマです。竜の剣について確かどこかの雑誌に触れていたような記憶があるなぁと思いながら、結局のところ見つけることができなかったので例によって例の如くの独断の積み重ねによって突破口を探すこととなりました。
最終的に出した結論は「竜の剣はサニアが持ってきたものではなく、老竜神の元にあるというのではなく、元々『王家の洞窟』にあったものではないか」ということです。王家の洞窟は大神ユリウスの神殿、ここには夢幻魔王イドを封印した鏡や、竜の像が置かれていたり、そして神から授かった知恵の象徴でもある「知恵の王冠」を使った王位継承の儀式の場でもあるという、ポポロクロイス王国だけではなく、世界全体にとって非常に大切な場所となっているわけです。ですからここに、竜の力の象徴でもある「竜の剣」が置かれていたのではないのかなぁと考える次第です。余談ですが、おそらく黄金の鍵も元々はここに置かれていたのではないかと思います。ギルダは王家の洞窟の管理をしているわけですから、妖精王メディアの導きによって黄金の鍵をナルシアに渡すことにしたのではないかな、と。
そして、息子であるピエトロを助けたいという、老竜神の血を引く母サニアの思いが、困難な旅に出るピエトロを前に、竜の剣をあの場所に呼び出したのではないでしょうか?竜の剣のようなものをどうやってあそこまで運び出すのか、という方向に話が進んでしまうと話は非常に堅苦しいものとなってしまいますが、竜の剣を「竜の力が結晶化したもの」ととらえると、その力を呼び寄せて、再び竜の剣に戻すのは竜族の王家の者であれば決して不可能ではないと考えられなくもないです。では「王家の洞窟にあるのであれば、代々王位継承の儀式をあそこで行ってきたポポロクロイス王家の人間は竜の剣について知らなかったのか?」ということになりますが、おそらく王家の洞窟内にそのような物が置かれている、という伝承は残されていたことでしょう。中にはその剣を使おうとした者がいるかもしれません。しかし、ポポまりの中で闇の聖域からあふれ出す力をを押しとどめていた、マルコがどれだけ力を入れて抜こうとしても抜けなかった竜の剣を、ピノンがいとも簡単に抜いてしまったことからも明らかなとおり、あの剣は竜族の血を引くものでなければ使えないわけですから、誰も使うことは出来なかったのでしょう。ポポロ1のイラストの中に、パウロとサニアが王座で四天王に周りを囲まれている場面がありますが、この時にパウロが手にしているのは竜の剣ではありません。
ピエトロが手にしていた竜の剣を見て、パウロは「それはサニアが持っていたものだ」と説明します。おそらく氷の魔王と戦う際に、サニアは王家の洞窟から竜の剣を持ち出して戦ったことでしょう。その様子を見たからこそのパウロのこのセリフであると考えれば、説明はつきます。そして竜の剣は「持ってきた」ものではなく、「持っていた」ものであるとみなすこともできるわけです。ではなぜ竜の姿をしている竜族が、人間、もしくは人間の姿で使うべきものである「竜の剣」をわざわざ受け継いできたのか、という疑問が出てくるかもしれませんが、竜族の国に人間が歩けるようにと階段が作られていたほどですから、かつて竜族と人間族との間には深い交流がありました。お互いの持つ力を尊重し合い、そして世界のためにお互いの持てる力を出し合って協力していたことでしょう。だから竜の力を人間族と共有できるようにしたものが竜の剣なのかもしれません。かつては竜族の血を引く人間が当たり前のようにいたのか、それとも竜王に認められた人間が竜の剣を使うことを許されたのか、はたまたバルバラン大戦以後、人間族には竜の剣を扱えないようにしてしまったのか、現在の人間族が竜の剣を使うことができなかった理由は定かではないのですが・・・。
それでもなお、竜族が竜の剣を継承し続けてきたのは、いつか再び人間族との交流を取り戻すことができたらとの思いがあったからこそではないでしょうか?竜族代々のそんな夢をピエトロが、そしてピノンが叶えることができれば、老竜神にとって何よりも嬉しいことになるでしょう。1日でも早く実現して欲しいですよね。