156 光から闇への転化

2004年1月24日

 「147 闇の世界」の中で、「光に属する、ということは光側にバランスを傾けた状態となっています。どちらか一方に傾く、という姿勢(体の姿勢ではなく心の姿勢)は一転するともう片方の側にも傾きかねない危険性を秘めています」と書きました。これを補足する形で、今回の件を掘り下げることにいたしましょう。
ポポロ2の中でピエトロは、マイラの手にかかって母サニアが逝ってしまった時、激昂のあまりにこう叫びます。「なんでボクばかりこんな目に遭わなくちゃいけないんだ、こんな世界どうなったって知るもんか!」と。余りにも悲しすぎる叫び、ですよね。10年間ずっとずっと会いたくて仕方がなかったお母さんと、ナルシア・白騎士・ガミガミ魔王と力を合わせて氷の魔王を倒すことによってようやく会うことができたのに、5年・・・たったの5年しか一緒に時を過ごすことができず、永遠に別れなくてはならないなんてあまりにも酷すぎます。パウロが止めようとしたピエトロの冒険を温かく見送り、そして落ち込んでいる時には励ましてくれて、ナルシアへの気持ちも十二分に察してくれていた、ピエトロの良き理解者であり、本当に優しいお母さんです。そしてサニアの想いもまた然り。あのような石で刺したところでマイラを止めることはできないことは分かっていたことでしょう。それでもピエトロやエレナ、そして愛しい人達が暮らす世界を危機にさらすわけにはいかない、マイラをそのまま行かせるわけにはいかない、そんな思いで最後の力を振り絞っての精一杯のことがあのマイラへの一撃だったのではないかと思います。
母サニアへの愛情があまりにも深く大きかったあまりに、失った悲しさは相応に深いものになってしまいました。これが光から闇に転化するということ、時には心の闇、心の隙と呼ばれるものであり、闇の意思カオスが隙あらば利用しようと目論んでいるものです。深い愛情が深い悲しみを呼び、そして深い憎しみを呼び起こすことになりかねません。それは神族である大神ユリウスですら、己のマイラへの愛情からくる悲しみをカオスに付け込まれて、自らの持つ強大な力を利用されないようにと、自分自身を石に変え封印せざるを得なくなってしまったほどです。神と言えど弱い存在なのかもしれません。
例えるなら、物体をより高いところから落とせば落とすほど、落ちた時の衝撃はより強大なものとなり、沈む込む深さもより深いものとなります。愛情が、思いが深ければ深いほど、闇に転じた時の心の闇の深さは凄惨なものとなってしまいます。それほどまでの闇から、白騎士とナルシアが救い出してくれました。その悲しみを乗り越えることができたからこそピエトロは強くなることが出来ました。光から闇に転化するというのは心の弱さなのかもしれません。でも弱いからこそそれを克服して心を強くする大きなきっかけとも成り得るわけです。闇に転化する危険を回避するために石と化さざるを得なかったユリウスと、闇に転化しそこから抜け出すことによって強くなったピエトロ、これは神族には出来ない、人間族だからこそできる偉大な命の営みであると考えて差し支えないでしょう。
世界が人間族を必要とする背景にはこうしたことがあってのことなのかもしれませんね。