2005年2月25日
言葉というのは非常に難しく、発する側と受け止める側とで、常に同じニュアンスになるという保証はどこにもありません。
・ヒュウが、初対面で自分の後ろをついてくる白騎士に言った「おじさん!」
・鋼鉄魔王を嘆かせることとなった、カイの「オ・ジ・サ・ン」の一言
・あのジルバが石と化してしまうほどに衝撃を与えたエレナの「おばちゃん」発言
・ピノンがエレナを呼ぶ時に使っている「エレナおばさん」という呼称
かような「おじさん」「おばさん」という呼び方は、時と場合によっては、言葉が本来示している意味に関係なく、その単語を発する者の意図のあるなしに関わらず、言葉以上に深い意味合いを持つことになります。あくまで主観的ではありますが、「おじさん」と呼ばれた男性が受けるショックの度合いと、「おばさん」と呼ばれた女性が受けるショックの度合いとでは、やはり後者の方が大きいものと思われます(ちなみに関西では「おじちゃん」「おばちゃん」よりも「おじさん」「おばさん」の方が、関東では「おじさん」「おばさん」よりも「おじちゃん」「おばちゃん」の方が嫌われる傾向にあります)。
さて、上に挙げた4つの例の中には、その用法を異にするものが1つだけあります。それは一番最後の「エレナおばさん」。エレナはピエトロの妹、そしてピノンはピエトロの息子になりますから、エレナにとってピノンは「甥っ子」ということになります。当然これをピノンの立場から見ればエレナは「叔母さん」になりますから、ピノンが言うところの「エレナおばさん」という呼び方は決して間違ったものではありません。用法的にも関係的にも極めて正しいものだと言えましょう。
しかし!いくらそれが正しいものであろうと、エレナはこれを決して許しません。その徹底ぶりは凄まじく、ポポロクロイスの人達が全員石になって大変な状況下であるにも関わらず、難を逃れて無事であったピノンが「エレナおばさーん!」と嬉しそうに駆け寄ってきた時にも、冷静に「おねーさん」と訂正させるほどのもの、心が一番無防備になっていると言われる夢の中においても、ピノンが寝言で「エレナおば・・・」と言いかけそうになったところをわざわざ言い直している位のものでしたから、エレナのこだわりが相当のものであったことは想像に難くありません。ピノンはエレナが敬愛してやまないピエトロの子ですから、さすがに手を出すようなことはありませんが、このNGワードを発したマルコに対しては容赦なく実力行使に出ています。あの時に発したオーラはまさしく竜の気そのものではないかと思えるほどの迫力でした。
いつまでたっても若くありたいと願うのは世の女性の常、確かにまだ花も恥らう18歳のエレナにとっては、たとえどのような意味であろうとも「おばさん」と呼ばれるのは許しがたいことなのかもしれません。かつてジルバをおばちゃん呼ばわりした自分が、大きくなってこんな風に思うようになるであろうことは、そしてジルバがガミガミ魔王を蹴り飛ばしたのと同じように、自分がマルコにゲンコツを食らわすことになろうとは、当時3歳であったエレナには思いもよらなかったはず。ここにもまた「歴史は繰り返す」の名言が当てはまるのかもしれません。
お茶を飲みながら昔の思い出話に花を咲かせているエレナ姫とジルバ王妃のところに、ピノン達がやってきたら、間違いなくマルコは、「あれ?エレナおばさん、こっちの見たことないおばさんって誰だ?」と命知らずな発言をしそうな気がしますが、その結果どんなリアクションが返ってくるのか・・・さぁいかに?!