208 北米版ポポロ、英訳よりどりみどり

2006年1月28日

 日本語は表現方法が多彩ですから、これを英訳するにあたっては元のニュアンスをどのように伝えるのか非常に苦労したのではないかと思います。なるほどなぁと思うトコロもあれば先の「ガミガミシティの驚くべき秘密」で取り上げたような、なんでこんな訳に?!と思うトコロがたくさんあります。今回はそんな英訳を順不同に紹介しつつあれこれツッコミをいれてみることにしました。中には英語の勉強になるようなことがあるかも?!

● ピエトロの屋根裏部屋の訳は「souvenir shop」、つまりお土産屋さん。ピエトロはお土産をコレクションしているのであって、売るためにあそこに並べているんじゃなーい!
● 獅子王の訳は「Lion-Hearted King」。「ライオンキング」という訳だったらどうしようと思ったので一安心・・・と思いきや後でバスカルがピエトロに「若き獅子王よ・・・」と呼びかける時には見事に「young Lion King」となっておりました。
● ヤンがピエトロを「実験体」呼ばわりしていましたが、英語では「Guinea pig」(ギニアピッグ)。なんでブタなんだろうと思って調べてみたら、動物実験の代名詞でもあるモルモットのことでした。
● なぜかヤンは会話の中で「she、her」と表現されてます。いつからヤンは女性になったんだ?!と思わずにはいられませんが、ロマーナ城下町に移ってからはちゃんと「He」と表現されてました。まさか5年の間に性別が変わったなどと考えたくもありません・・・。
● ナルシアを言葉巧みにだました老婆ガープも会話の中では「him」となっていましたから男性扱いされてしまってます。ガープは妖精王メディアに「ピチピチギャルにしてもらう」などと言ってましたが、この訳がどうなっているのか見落としてしまいました。でもガープって老婆ですよね?
● パーセラにあるバー「ムーンライト」はなぜか「Ghost Hole Lounge」つまり「お化け屋敷」になってます。それはあまりにお店の人に失礼のような気が・・・。
● ガミガミシティにて売られている「ガミガミもなか」は「Gami Gami Cake」。もなかは確かにアメリカでは売られていないので「ケーキ」になったのでしょうね。でもガミガミケーキとは一体どんな形をしているのか見たくもあり見たくもなし?!
同様にロマーナ城下町でジョーとアキラが奪い合っていた「まんじゅう」も「ケーキ」の訳になってます。
● ガミガミ魔王の定番中の定番である「夢とロマンの自爆スイッチ」の訳は「Super Secret Special Surprise Suicidal Bomb」という何やら英語的に語呂のよいものになっています。直訳すると「超秘密特別仰天自殺的爆弾」・・・何やら中国4000年の香りが・・・。
● ガミガミ魔王はナルシアのことを「My little forest bunny」、訳すと「小さな森のウサギちゃん」などと呼びかけてました。ナルシアのあの帽子がウサギの耳を連想させたのでしょうか?
● 闇の世界の王ダーナは「小さいものと話すのは疲れる」と言っていますが、この場合の小さいものとはピエトロ達人間全体のことを意味しますが、英訳ではこの部分が「children」つまり「子供」と訳されてます。となると先のダーナのセリフは「子供と話すのは疲れる」になってしまうわけで・・・思わずそんなこと言わずに大人の対応よろしくお願いしまーす!と頼んでみたくなってしまったり。
● ダーナは外見的に女性かと思ってたんですけど訳が「King、He」となっている辺り男性みたいです。「妖精王」の場合はちゃんと「Queen」となっているので単純に「王=King」と訳しているわけではないようなので。
● さらにダーナに関する訳で、ピエトロ達の世界を「home planet」と言っています。この意味から察するに闇の世界から見るとポポロクロイスの世界は「別天体」ということになりますが、闇の世界が宇宙空間のように見えるからこのような訳になっているのではないかと思われます。
● なお、ダーナの英語表記は「Danu」、そのまま読むと「ダーヌ」になりそうなんですけど、英語での発音はどのようなものなんでしょうね?
● ブリオニアのオートマン、英語では「laborer cyborgs」・・・労働用のサイボーグらしいです。サイボーグというと人間の姿格好したものを思い浮かべてしまうんですけどいかがなものかしらん?
● ガミガミ魔王が白騎士をよく罵っていう「ヨロイ野郎!」は「You worthless piece of tin.」、要するに「価値のない鉄クズ」と言っているみたいです。白騎士はロボットではなく人間なんですけど・・・もしかしてロボットと勘違いされてしまっているとか?!
● ソームの種の訳は「Seed of Soma」、そのまま読むと「ソーマの種」で微妙に音が違いますが、「Soma」には「体」という意味もあるようです。深い意味があっての訳なのか、単に音に合わせているだけなのか・・・謎です。
● サボーさんの飼っている犬の名前は「ランディ」ですが、これが英語では「Buddy」となってます。なぜランディという名前がバディという訳になっているのか分かりませんが、「相棒」という意味の単語のようです。相棒では、サボーさんを犬扱いしてランディと同格の扱いをしているような気がしなくもありません。
● 鬼面童子はナルシアがカイに変身した際に「変わり身の術のようなもの」と言っていましたが、この訳は「ninja magic」、どうやら変わり身の術は忍者の技だと向こうでは思われているようです。一方ジルバはナルシアの変身を見て「スーパーガール(注:スーパーマンの女性版)のようだ」と感心してました。確かにスーパーマンも素早い変身でお馴染みですからね。
● ロマーナの訳は「Roma」。それじゃ「ローマ」になってしまいますよぅ。ちゃんとポポロマーナ号も「PoPoRoma」と訳されているあたりはしっかり見ているなぁと感心してしまいますが。
● ロマーナ城下町にある「ダンスダンスダンス」のお店は「PoPoBooGy」との訳になってますが・・・意味が分かりません、先生!
● ガミガミ魔王の訳が「Gami Gami Devil」なので鋼鉄魔王の訳はどうなるだろうと思っていたら、「Steel Devil」とそのまんまの訳だったので結構拍子抜けでした。
● 鋼鉄魔王の自爆スイッチは「detonator switch」(起爆スイッチ)とガミガミ魔王の自爆スイッチに比べるとあっさりとした表現になってました。なお、このボタンを押そうとする鋼鉄魔王を止めるためにカイは「やめなよ、オジサン!」ではなく「Stop crazy old man!」と思いっきりキチガイ扱いしているのが表現の恐ろしいトコロ。
● 鋼鉄魔王城の中でロボットがパンチカードを見ながら「今日の魔王様のゴハンはスペシャルネコマンマでフね」と話す場面がありますが、スペシャルネコマンマを英語で表現すると「special leftover scraps」、「特別な残り物・スクラップ」と訳しにくいですがネコマンマという食べ物の的を得た表現かなぁと思います。でも味噌汁ぶっかけご飯のことをネコマンマと呼ぶ人って最近見かけなくなったような気も。
● 「週間ヒーローガミガミ」は「garbage」、つまり「ゴミ」、とものの見事にゴミ扱いされてしまってます。
● ジルバの悲鳴、「ヌルってしたぁー!」の訳は「Something slimy touched me.」、直訳すると「何かヌルヌルしたものが私に触れた」になります。なぜ「I」ではなく「something」が主語になっているのか・・・この辺が受動表現の別バージョンという英語の奥深いところでもあります。
● 貧乏神もアメリカにいるのかなぁと思っていたら、「God of Misfortune」(不幸の神)と訳されていました。それでもちゃんと「Moderation(質素) is the best!」と説いてくれています。
● レオナが酔っ払っていた時の「白ちゃん」発言、英語ではこれをどうやって表現するのでしょう?答えは「Knightie」という「knight」(騎士)の語尾を変えたものでした。日本語的に表記すれば「ナイティ~」という感じでしょうか。
で、ジルバの「白騎士、オラァ!」は「Come’on White Knight!」、「白騎士サマ」は「Mr. White Knight」となってます。改めて日本語の表現力の豊かさを感じてしまいますね。
● 妖精王メディアの名前が「Midea」と表記されていました。音をローマ字読みすると「メディア」ではなく「ミデア」とわずかに異なった名前に。ギリシア・ペロポネソス地方に「ミデア遺跡」という名前の場所が存在しますけど、この音の違いには何か理由があるのでしょうか?
● 名前の違いということでもう1つ。フンバフンバ村出身でロマーナのコンテストで優勝した娘「ティム」は、英語では「Helga」(ヘルガ)という名前に変わっています。えー、ヘルガさんってどこのどちらさま?
● ナルシアにとって生まれて初めての危機とも言える「ハネハネショッカク」「スーパーギルダ弐号」の名前、英語ではそれぞれ「Antenna Ears」(触覚)、「Lil’ Guilda」(小さなギルダ)との表現に。小さなギルダと名付けられて泣きわめくナルシア・・・確かにそれはムリからぬこと。
● 日の国は英訳ネタの宝庫!まず日の国そのものが「Webler City」(うぐいす市)と国扱いされてません。タコヤキ屋さんは「calamari(食用イカ) shop」となり、将棋の場面はチェスに置き換えられ、かのお殿様の名前は「Asahi Ryugu Tensei」と短いものになって、水龍のほこらのあのバケモノは「Sumo Flog」(相撲蛙)との訳に。
● 日の国を守ってきた水龍の説明の中に「killed」との単語が。つまり水龍は誰かに殺されてしまったことになるのですが、それが事実だとしたらその犯人は、目的は一体どこにあったのか、大きな謎がまた1つ増えてしまったような気が・・・。
● 猿でお馴染みのウッキー軍団、ウッキーの英語表記は「Wicky」となっていて、これでは「ウッキー」ではなく「ウィッキー」。何やら英会話を教えてくれそうな名前で思わず顔まで思い浮かべてしまいます(世代的な古いネタですみません)。

といった具合に、意訳・迷訳がイロイロあって実に楽しむことができました。こうした訳の違いが日米でポポロの世界を感じるにあたって大きな違いを生み出すようなことは決してないと思うので、心配はいらないでしょう。こうしてみると、自分や相手の呼び方や語尾の変化に敬語などなど日本語の表現力は「世界一難しい言語」と言われるだけあって本当に豊富です。それほどまでに難しい言葉を習得していても、外国語を習得するのは難しいんですよね、これが。
さすがに文字ばかりでは疲れてしまうと思うので、最後に画面写真を交えた迷訳を紹介して今回の項の締めくくりといたしましょう。トリを務めるのは「ナルシアちゃんは・・・男のロマンが100億年なのれす・・・」のガミガミ魔王のあの言葉。さぁ、英語ではこれをどのように表現してくれるのでしょうか?!

 えー、「いつまでも一緒にいよう、子供を作ろう」などとムチャクチャなことをつぶやいてますね、北米版ガミガミ魔王は。


※2006年3月18日追記
掲示板にて、べに龍さんより上に挙げた訳の疑問に対するご指摘を頂いておりますので、こちらでも紹介させていただきます(掲示板より抜粋)。

ダーナ神の表記「Danu」。これは、ケルト神話のダーナ神族の母神、ダヌのことです。(私も最初にダーナの名を見たとき、こちらを連想して、ダーナ様は女だと思っていたのですが…アートブックかなにかに、ダーナが男性格だとさりげなく書いてあって、おや、と思った気がす)

ソームの種の表記「Soma」。ソーマとは、もともとインド神話に出てくる神の酒、あるいはその原料となる不思議な植物のことです。

妖精王メディアは…最初、悩みました。ギリシャ神話でおなじみの魔女メデイアはMedeia、Medeaですし。しかし、欧米の人が日本よりずっとギリシア神話になじみが深いはずと気が付いたので、これはもしかしたらわざとギリシャ神話の王女メディアの名を避けたのではないかと思い至りました。悲劇の王女とも稀代の悪女とも呼ばれるメディアですが、「善より悪を多くなし」て、心変わりした夫との間に出来た子供たちを殺したことに異説はなく。…我が子の姿に思わず気を許してガープにやられた妖精王の名としては違和感があります(現に私も、メディアの名に惑わされ、最初のプレイでは、途中まで妖精王に二面性があるのでは…と、おっかなびっくりでした)

ついでに調べてみました。フンバフンバ村のティムですが…英語でTimは、男性名Timothyの省略形だそうです。