227 騎士道精神の歪み

2008年5月24日

 いまだに正体不明の白騎士。どこからやってきたのか、放浪の旅に出るきっかけはなんだったのか、どういういきさつであの鎧を身にまとうようになったのか、素顔はどんなんだろう、レオナと結ばれマルコが生まれた後もどんな旅を続けているのだろう、「ござる」言葉ということは日の国出身?!、流星号と出会いはどんな風だったのだろう、などなど謎が次々と浮かんできます。その旅の途中、数々の事件、数々の出会いがあったと思いますが、ピエトロ達との出会いもまた生涯忘れえぬ思い出となったことは想像に難くありません。
少なくとも白騎士はピエトロ達に2回助けられています(ポポロ1の「ゴドリフ鉱山」、ポポロ2のトンネル工事地)。もっともドン&ゴンが「助けの必要はいらなかったんじゃないか」と話していたように、なんとか自力で脱出できる可能性もるにはあったことと思いますが。これは実際の「身」に対してのピンチであったわけですが、精神的な面でもピエトロ達によって変わった、救われたのではないかと思われる場面があるんですよね。
それはポポロ1でガミガミ魔王を倒した後のこと。
夢とロマンの自爆装置で城を爆発させた後、ガミガミ魔王は脱出ポッドで逃げ出したはいいもののフローネルの森に墜落、火だるまになって助けを求める羽目に陥ります。そんな姿を見たナルシアは「助けてあげて!」と悲鳴を上げますが、白騎士は「こんな悪いヤツは放っておけばいいでござるよ」と意にも介さない反応を見せます。これに対しナルシアは「助けを求める人を放っておくなんてそれでも騎士なんですか!」と白騎士を一喝しました(余談ですが、ナルシアが怒りを見せる場面って数少ないです。後にガミガミ魔王を蹴り上げたりもするわけですが、それ故に彼女が怒るというのはよほどのことなのかも)。その声に白騎士は考え込み、その結果、ガミガミ魔王は助けられることとなりました。直接的な命の恩人が白騎士、間接的な恩人がナルシアで、ガミガミ魔王のナルシアへの情熱にも火がつくこととなり、まさに身も心も火だるま状態。
白騎士が旅をしていた理由、それはキングナイトの剣を探すことですが、と同時に騎士としての生き方、すなわち騎士道精神を極める修行の旅でもあり、弱気を助け強気を挫く、全ては世のため人のため、困っている人に手を差し伸べ続けてきたことと思います。そんな旅の中で様々な「悪」と対峙しているうちに、「悪」に対する憎悪の念が白騎士の心の片隅に出てきてしまったのではないでしょうか?ゆえに「悪いヤツはどんな目に遭っても仕方がない」と思うようになり、火だるまのガミガミ魔王に対して、あのようなことを言ったのではないかと。もちろん誰しもが思うことなので白騎士を非難するつもりは毛頭ありません。
しかしナルシアは純粋でした。「罪を憎んで人を憎まず」という言葉がありますが、そんな言葉以前の、善悪の関係なしに「困っている人をなぜ助けない」とのあまりにもストレートな怒りでした。子供ゆえの発言であったかもしれませんが、だからこそ白騎士も考えさせられることになったのではないかと考えます。
決して悪を憎むことが悪いわけではないけれど、そのあまりに大事なことを見失いそうになっていたのではないか、悪いヤツをこらしめるのであれば何をしてもいいのか、と修行の旅を始めた頃の自分と今の自分を比較して考え、旅の原点を振り返るきっかけになったと捉えられます。ナルシアの言葉のみならず、大切な人を守るために一生懸命に頑張るピエトロの姿もまた然り。
白騎士がヒュウに対して、「ピエトロ殿は心の友でござるよ」と熱く嬉しそうに語っていたのは、こうしたいきさつがあったからではないかな、と思います。

今回も、とある作品のとある言葉を引用して、今回の締めとさせていただきましょう。

「人は様々なものに影響を受けながら生きていく存在だ。逆に生きているだけで様々なものに影響を与えていく。
それこそが『縁』であり――『縁』は深まれば『絆』となる。そして、一度結ばれた『絆』は決して途切れることがないものだ。
遠く離れようと、立場を違えようと、何らかの形で存在し続ける」